表具(掛軸など)に使う「寒糊(かんのり)」というでんぷん糊があります。
この「寒糊」というのは「生麩(しょうふ)」と呼ばれる生でんぷんを丹念に炊いて作られ、国宝級の表具などにも利用されてきたでんぷん糊で、涼しい所で5年以上寝かせて使用する糊のことです。この「寒糊」には(当然ですが)化学物質は一切使用されていません。しかし「寒糊」の作成には手間ひまがかかり、非常に高価なものなので、一般住宅ではなかなか使用出来ないものです。
当店作成のでんぷん糊「炊き糊一番」は漂白をしたように真っ白ではありません。
それは昔ながらの「生麩入り」だからこそなのです。
現在、市場で販売されているでんぷん糊のほとんどは「冷糊法」と呼ばれる物理化学的方法によって作成されています。「冷糊法」は、1950年代頃の経済が急速に発展したころから大量生産品に適応されるでんぷん糊の作成方法です。
原材料の中に苛性ソーダをいれて混ぜる。苛性ソーダには熱を発し、さまざまなモノを溶かす作用がある(骨も溶けます)ため、熱を加えることなく混ぜるだけで「でんぷん糊」ができるので、大量生産品を作る際に適応されています。
しかし「でんぷん糊」は1950年代以前から作成されているものです。昔ながらに作成されてきたでんぷん糊は大釜で炊いて作られていました。そして「でんぷん炊き糊」とは、読んで字のごとし。「でんぷんを丹念に混ぜながら炊く」のです。これが本来のでんぷん糊です。
昨今、 でんぷん糊の原料は、機械で強制乾燥して作成されていますが、当店のでんぷん糊は「天日干し小麦粉でんぷん粉を使用」してます。そのため風味が飛ばず、また「生麩」が入っているため、強制乾燥でんぷん粉で作成された でんぷん糊とは異なり、ギスギスした感じがありません。
水分、養分のあるものに温度が加わると物は腐ります。それは、自然界では当たり前の事。「食品」や「でんぷん糊」も同じく腐るのです。でも、防腐剤を全く使用しないとでんぷん糊は2~3日で腐ってしまいます。それでは、「でんぷん糊の商品」として不完全な上に不便です。当店では、出来る限り自然に近いでんぷん糊の商品をと考えて「FDAの認証」の食品医薬品(食品医薬品包装用)の防腐剤を使っています。
化学糊はじんわりと乾くので、木材等の灰汁(アク)が紙に出やすくなります。その点、でんぷん糊は水分の発散が早いため、表面に膜が張り、化学糊よりも早く乾きます。そのため、木材等の灰汁も出にくいのです。
「すぐに刷毛がダメになってしまう…」そんなお話をよくお客様からも耳にします。それは、今ご使用の「でんぷん糊」になんらかの薬品が含まれており、刷毛にダメージを与え、刷毛の寿命を縮めてしまっているのです。本当のでんぷん糊には、薬品などは使用されていないので「刷毛にダメージを与えること」も「住宅内の環境も、そこに住まう人に害を与えること」も「障子の桟の寿命を縮めること」もありません。障子紙をはがす際にも、薬剤等は必要なく「水だけできれい」に桟から剥がれます。
刷毛も、障子の桟も、もちろん大切。そして何よりも大切なのは、そこに住まうお客様ではないでしょうか?
開封後は、できるだけお早めにご使用下さい。
糊が残った場合は、密封して冷暗所で保管してください。水分が蒸発し多少分離して塊になりますが、希釈して頂ければ使用可能です。
*袋底の角を3cm程度挟みで切りとり、 保管時には密封をしてください。(冷蔵庫には入れないで下さい。糊が硬化します。)
以下はあくまで目安です。
*紙の種類などで割合を変更してください。